講演会&セミナー 2020年度

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セミナー記録

2020年 11月 26日 (木)13時00分-16時55分 埼玉大学・岡山大学 若手合同シンポジウム
オンラインセミナー  埼⽟⼤学グリーンバイオ研究センター主催、岡山大学資源植物科学研究所、埼玉大学 分子生物学科・戦略部門 共催

13:00~ 開会挨拶  重原孝臣(埼玉大学理事)・高木優(埼玉大学グリーンバイオ研究センター長)
前半:座長 高橋大輔
13:10~ 高橋拓子(埼玉大学)「クラミドモナスPGRL1タンパク質が PSI光防御に果たす役割」
13:30~ 小澤真一郎(岡山大学)「光合成の光捕集の柔軟性」
13:50~ 高崎寛則(埼玉大学)「転写因子を利用した種子発生制御研究」
14:10~ 池田陽子(岡山大学)「植物の進化とDNAメチル化制御」
14:35~ 石川寿樹(埼玉大学)「独自の分子構造多様化がもたらした 植物スフィンゴ脂質の多面的機能」
~休憩~
後半:座長 高橋拓子
15:10~ 宮城敦子(埼玉大学)「稲わらの高品質化に向けた イネのシュウ酸蓄積機構の解明」
15:30~ 山地直樹(岡山大学)「節のミネラル分配を理解して コメの栄養価を高める」
15:55~ 高橋大輔(埼玉大学)「植物の凍結適応過程で起こる細胞壁変化」
16:15~ 河野洋治(岡山大学)「ペアNLR型免疫受容体Pit1とPit2の進化解析」
16:45~ 閉会挨拶  小竹敬久(埼玉大学大学院理工学研究科教授)・坂本亘(岡山大学資源植物科学研究所長)


2020年 9月 11日 (水)16時25分-17時45分 オンラインセミナー 分子生物学科・環境科学研究センター・SUPER FORUM共催

演者:野田口 理孝 准教授(名古屋大学 生物機能開発利用研究センター)
題目:接木における組織の接着機構

接木は2種類の植物をつなげる手法で、2千年前より現在まで使われる農業に不可欠な技術です。果樹のクローン増殖や、野菜類の土壌病害への抵抗性獲得のために接木は使われ、我々の生活とは切り離せない技術です。しかし、接ぎ木の組み合わせは限定的であり、接ぎ木苗の生産手法は未だに手作業によることが大半です。本講演では、これらの問題を解消する可能性のある技術として、様々な植物に接木することのできるタバコ属植物を用いた「異科接木法」と、マイクロデバイス工学を活用した接木苗の量産を助ける技術「接木マイクロチップ」を紹介します。特に前者の研究では、その分子イベントをトランスクリプトーム解析で探求しました。その結果、細胞生物学的な観察で見出された細胞壁の消化と、その結果として生じる組織の接着機構を説明する分子機構として、セルロースを消化する酵素と予想されるs-1,4-glucanaseがタバコ属植物から同定されました。さらに興味深かったことは、同様の遺伝子が他の植物の接木や寄生植物の寄生現象でも働いているということでした。接木という農業技術の研究から、植物科学におけるどのような一般的な問いに迫ることができるのか、考察してみたいと思います。

参考文献
Notaguchi et al., Science, 369: 698-702, 2020
Kurotani et al., Comm Biol, 3: 407, 2020
Tsutsui et al., Plant J, 103: 918-929, 2020

2020年 9月 1日 (火)16時00分-17時20分 オンラインセミナー 分子生物学科・戦略部門 共催

演者:島田 貴士 博士 (千葉大学大学院園芸学研究科)
題目:植物のオイルボディ ~新しい生理機能の発見を目指す~

植物は貯蔵物質である中性脂質を、脂質を蓄える細胞小器官・オイルボディに蓄えます。 私はオイルボディが関わる様々な生命現象の解明を目指しています。 種子のオイルボディの構造タンパク質・オレオシンの量が少ない変異体は、種子が凍結 した際、オイルボディ同士の融合が進んで巨大化し、種子発芽を阻害することがわかりました 1 。一方、葉に存在するオイルボディの機能は未解明でした。私は葉のオイルボディタ ンパク質として、Caleosin3 とα-dioxygenase1 という 2 つの脂質代謝酵素を発見しました。 この2つの酵素は抗菌物質の産生に関わることが分かりました 2 。オイルボディは凍結耐性 や抗菌物質の産生といった様々な生理現象に関わることが示唆されました。 近年の研究として、葉にオイルボディを異常蓄積するシロイヌナズナ変異体を単離し、 脂質代謝制御因子の発見を目指しています。high sterol ester 1(hise1)変異体の葉には、ステロールエステルを主成分とするオイルボディが蓄積していました。原因遺伝子は機能未知のタンパク質をコードしており、新規のステロール合成制御因子ということが分かりました。HISE1 はステロール合成の律速酵素・HMG-CoA reductase 量を減少させることでステ ロール過剰合成を防ぐことが示唆されました 3 。現在は、他のオイルボディ変異体の解析を 進めており、葉に脂質を高蓄積させる技術の実用化を目指しています。

文献
1Shimada et al. The Plant Journal, 55, 798-809
2Shimada et al. Plant Physiology, 164, 105-118, 2014
3Shimada et al. Nature plants, 5, 1154-1166, 2019

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