講演会&セミナー 2009年度

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2009年12月 16日 (水) 14時40分ー16時40分 理学部3号館11番教室 分子生物学科セミナー

演者: 関口順一 教授 (信州大学大学院総合工学系研究科)
題目: 枯草菌細胞壁溶解酵素の増殖・形態への関わりと溶解酵素の多様な基質分解能

枯草菌は30種以上の細胞壁溶解酵素遺伝子を持ち、それらは細胞増殖、形態、胞子形成・発芽、プロファージ関連など多様な役割をしている。特に最近枯草菌で唯一の必須2成分制御系が、表層の各種成分とともに細胞壁溶解酵素のLytE、 CwlOを正に制御することが報告された。さらにLytE、 CwlOの2重変異株がsynthetic lethal を示すことより、細胞側面での細胞壁の分解が増殖に必須であることが解ってきた。そこでLytE、 CwlOの局在性と局在ドメイン、 溶解酵素ドメインの役割について最近の結果を報告するとともに、多様な溶解酵素の基質特異性についても紹介する。

参考文献

2009年11月 18日 (水) 13時00分ー14時30分 理学部3号館11番教室 分子生物学科セミナー

演者: Prof. Youngsook Lee (Pohang University of Science and Technology, Pohang, Korea)
題目: Heavy Metal Resistance Genes and Their Use in Phytoremediation

Youngsook Lee先生は、埼玉大学の世界還流プログラムで来日されています。この機会を利用し、先生のご研究テーマのひとつである、重金属耐性遺伝子とその環境浄化への応用に関してセミナーをお願いしました。本セミナーは、分子生物学科3年生他で2009年度「植物分子生理学II」(西田担当)の受講生は必修です。
酵母を用いた重金属耐性の評価や、形質転換ポプラを用いた鉱毒除去の試みなどについてお話いただく予定です。学部学生だけでなく大学院生、教員の皆様の参加も歓迎します。

2009年11月14日 (土) 13時00分ー16時00分 理学部3号館11番教室 生命科学講演会

本年度は埼玉大学創立60周年にあたり各種の記念事業が開催されています。本学科でも記念事業の一環として各分野でご活躍の同窓生の方々にご講演をお願いし、下記の要領で学術講演会を開催いたします。どうぞお誘い合わせのうえ、ご来学賜りますようお願い申し上げます。

講演者ならびに演題 -副題-

2009年10月28日 (水) 15時00分ー16時30分 理学部3号館11番教室 分子生物学科セミナー

演者: 田中 暉夫  博士 (元東海大海洋研教授) 
題目: 枯草菌菌体外プロテアーゼ遺伝子aprE の制御

枯草菌と大腸菌は、遺伝学・生化学・ゲノム学がよく研究されているグラム陽性と陰性を代表する細菌である。両者には種々の違いがあるが、その代表例として枯草菌は菌体外に種々の酵素を分泌すること、栄養が枯渇すると胞子を形成することがあげられる。我々は、先人の研究により分泌酵素群のうち比較的遺伝学的研究が進んでいたアルカリプロテアーゼ遺伝子aprEの発現制御に興味を持ち研究を続けてきた。他の研究者の成果も含めて概略を述べると、aprE発現は正にも負にも制御されており、直接aprEのpromoter上流に結合してその作用を発揮する4つの因子がある。それらは正の制御因子であるDegU、負の制御因子であるScoC、SinR、AbrBである。この中のDegUはその遺伝子が直ぐ上流にあるDegSとともに二成分制御系を構成している。これら以外にも間接的にaprEの発現を制御する因子が多数知られているが、それらはすべてDegUかScoC経路を通してその制御作用を発揮するものである。

また、AprEはプロテアーゼであるので、枯草菌が菌体外に生産・分泌する目的は、その生息域に存在するタンパク質を分解し窒素源として確保するのであろうと考えられる。このような見地から検討してみると、事実、窒素制御系のよく研究されている制御因子GlnA、TnrAが関与していることが分かった。そしてその制御形態もDegUとScoC経路を経由していた。

aprEは研究室レベルでは生育に必要ではなく、いわゆる必須遺伝子ではない。しかしながら、枯草菌の棲息域である土壌や根圏などでは栄養が乏しく、自らが生きるためには、周辺に存在する動植物由来のタンパク質を分解し細胞内に取り込む必要があり、aprEはその手段であると考えられる。それ故、枯草菌からすればプロテアーゼ遺伝子は"必須遺伝子"なのであろう。

2009年6月24日 (水) 16時20分ー17時50分 理学部3号館11番教室 分子生物学科社会人セミナー

演者: 加藤 國基 博士 (日本化薬株式会社創薬研究所、慶応大学理工学部化学科をこのたびご退官) 
題目: 分子標的抗がん剤の耐性克服研究  -Onco知新-

がん治療領域(Oncology)における先達の足跡(温故)から有機合成的手法を取り入れた最新の分子標的治療薬(知新)にまで話が及び、製薬企業や癌の基礎研究を志望する学生にはがん治療の現実を知るよい機会になりました。また、今回は基礎化学科からも多くの参加者がありました。Oncologyは分子生物学と有機化学が融合した新たな学問領域であり、分子生物学科、基礎化学科それぞれの学生が大いに刺激を受けたことと思います。

2009年6月5日 (金) 16時20分ー17時50分 理学部3号館11番教室 分子生物学科セミナー

演者: 仲宗根 薫 教授 (近畿大学工学部  生物化学工学科) 
題目: 高度好塩性アーキアHaloarcula japonica における遺伝子発現システムのポストゲノミクス

高度好塩性アーキアHaloarcula japonica TR-1株は、石川県の塩田から分離された、至適塩濃度が20%の微生物である。TR-1株は、三角形という特異な形態を有し、これまで本菌株由来のftsZ等の細胞分裂関連遺伝子の単離やFtsZ蛋白質の研究などが進められてきたが、本菌株全体をシステマティックに理解するためのゲノム情報解析の基盤整備は行われてきていない。そこで、高度好塩性アーキアのゲノム情報に基づく様々なレベルでの研究の基盤形成、またゲノム資源としての潜在性を最大限に利用する目的でHaloarcula japonica TR-1の全ゲノムを解析した。H.japonica TR-1株の染色体DNAよりショットガンライブラリーを作成し、8x程度のcoverageでシーケンシング、Phred/Phrapによるアッセンブル、その後様々なリピート解析によりゲノム配列のフィニッシングを行い、約4.2Mbのゲノム配列情報を得た。さらにInsilico Molecular Cloning Genomic Edition (imcGE)ソフトウェアによりアノテーションを行った。全ゲノム解析の結果、5つのレプリコン(3.0Mb, 613kb, 506kb, 95kb, 51kb)、約4,057の遺伝子の存在が示唆された。既にゲノム解析の終了しているH.marismortuiとTR-1株とは同属であるばかりでなく、16SrDNA解析からはお互いに非常に近縁であることが明らかであるものの、レプリコンの数(8レプリコン)は異なり、また最大のレプリコンにおける必須遺伝子群に関してはオペロン構造の保存性が高いことが確認された。また、それ以外のレプリコンの遺伝子組成はお互いに異なるものが多く観察され、好塩性アーキアに共通な遺伝子群の解析やTR-1特有な遺伝子群の解析などに興味がもたれる。さらに、高塩濃度下における、本菌株の転写・翻訳システムの構造的特徴に基づいたポストゲノム解析を行い、好塩性アーキア独自のシステムの解明理解を目指しており、その現状について議論を進めていきたい。

2009年5月13日 (水) 16時20分ー17時50分 理学部3号館11番教室 分子生物学科社会人セミナー

演者: 松井 恭子 博士 (産業技術総合研究所 ゲノムファクトリー研究部門) 
題目: 人生の宝探し

本セミナーは一般の就職ガイダンスとは異なり、社会で活躍している現役の方あるいは社会経験の豊富な退職されている方をお招きして、人生の先達としてのアドバイスをいただき、学生諸君の人間形成の一助とすることを目的としています。

現在、目の前の研究対象、解きたくてたまらない現象が今の私の宝であると言えます。DNAからRNAに転写され、核から出てタンパクになり、一部はまた核に挿入され働く。その必然はどこからくるのか。転写がonになったりoffになったりするメカニズムはなんであるのか。自分の目の前の材料で見て納得してみたい。この事象が 私の興味であり研究であって生活の一部であることはこの上もなく幸福です。これまで、社会に出て20年以上という時間を過ごし、種々の宝を手にしてきました。家族との普通の生活はいつでも私の大切な宝です。そんな中で私は沢山の引き出しを作ってきたように思います。女性は本来欲張りでしなやかさとそれ故の強さがあると思います。私の歩んできた道を一つのケースとして、自然科学を勉強している方々へ、科学の複雑さや面白さ、美しさが宝の原石であることをメッセージとして伝えたいと考えています。

2009年4月22日 (水) 16時20分ー17時50分 理学部3号館11番教室 分子生物学科セミナー

演者: 平野 博之 教授 (東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻) 
題目: 植物の幹細胞の維持と花の発生を制御する遺伝子の働き   -単子葉類のモデル植物イネを中心として -

生命体を構成する器官や組織は、全ての細胞に分化する能力をもつ幹細胞に由来しています。動物では,日本の山中教授らにより体細胞から人為的に幹細胞(iPS細胞)をつくり出す技術が開発され、大きな注目を浴びています。もちろん、植物においても、全ての細胞は幹細胞に由来しています。植物では、シュート(茎葉部)や根の先端にメリステム(分裂組織)という未分化細胞の集団が形成され、その中に幹細胞が存在しています。この幹細胞は、細胞分裂により、自分自身をつくり出すとともに、葉や花などの器官に分化されるための細胞を供給します。したがって、植物発生学の分野では、この幹細胞が如何に正確に維持されているのかを理解することがきわめて重要な課題です。そして、花の発生においては、幹細胞から供給された細胞がいろいろな遺伝子のはたらきによりその運命が決定され、花弁やおしべ、めしべなどの花器官が分化してきます。私たちは、単子葉植物のモデル生物であるイネを研究対象として、幹細胞の維持と花の発生のメカニズムを理解するための分子遺伝学的研究を行っています。本セミナーでは、まず、真正双子葉植物のモデル生物であるシロイヌナズナの研究から得られている、基礎的な事項を概説します。次に、イネの幹細胞の維持や花の発生に関する、私たちの最新の研究成果を紹介したいと思います。私たちの研究から、被子植物一般に共通するメカニズムと、イネやシロイヌナズナなど各植物における独自性が徐々に明らかになってきています。興味のある方は、次の解説・総説を参考にして下さい。

2009年4月15日 (水) 14時ー15時30分 理学部3号館11番教室 学術講演会

演者: Dr. Paul Dupree (英国ケンブリッジ大学) 
題目: Synthesis of plant cell wall glucomannan and xylan

Dupree博士は、細胞壁多糖類の生合成、多糖類の構造解析、糖ヌクレオチド輸送などで顕著な成果を上げられている、植物細胞壁分野のリーディングサイエンティストです。本セミナーでは、最近遺伝子が同定されたグルコマンナンとキシランの合成酵素に関する講演を行っていただきます。本セミナーは英語で行いますが、学部学生、大学院生の来聴を大いに歓迎します。

2009年2月9日 (月) 16時20分ー17時50分 理学部3号館11番教室 分子生物学科セミナー

演者: Prof. Antoni R. Slabas (英国ダラム大学)
題目: Extracellular ATP and the inhibition of cell death in plants

Slabas教授は、筑波大学の国際連携プロジェクトによる共同研究のため来日されているところ、埼玉大学への訪問と学術講演をお願いしました。植物の細胞死に関するたいへん新しい研究成果と、最新のプロテオーム技術について、興味あるセミナーをしていただきました。

2009年2月4日 (水) 16時20分ー17時50分 理学部3号館11番教室 分子生物学科セミナー

演者: 北村 栄子 博士 (Assistant Specialist, Jules Stein Eye Institute, School of Medicine UCLA)  
題目: 組織特異的DNAメチル化の解析

近年DNAの配列以外に、クロマチン構造変換が遺伝子の発現調節に重要な役割を演じていることが示されている。クロマチン構造を変換する一因子としてゲノムDNAのメチル化が知られている。ゲノム上に存在する多くの遺伝子のプロモーター領域にはCpGアイランドと呼ばれる配列があり、この領域がメチル化されると染色体の凝集もしくは転写因子が直接DNAに結合できなくなり、遺伝子の転写を抑制すると考えられている。マウスを用いたDNAメチル化の網羅的解析では、組織特異的メチル化によって転写抑制される遺伝子が報告された。本研究ではマウスで観察されたような組織特異的にメチル化されるヒト遺伝子の探索とその解析を行った。また、腫瘍サンプルを用いた解析により、腫瘍特異的メチル化遺伝子の同定を試みた。

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