講演会&セミナー 2006年度

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2006年10月26日 (木) 12時40分ー14時 理学部3号館11番教室 学術講演会

演者: 小林 俊秀 主任研究員  (理化学研究所 小林脂質生物学研究室、埼玉大学大学院 理工学研究科 客員教授)
題目: 脂質を見る

細胞内には数千の脂質分子種が存在し、それぞれの脂質に特徴的な時間的、空間的配置が細胞のホメオスタシスを支えていると考えられている。しかし脂質の分布や動態に関する我々の知識は非常に限られたものである。 たとえば細胞内のオルガネラの脂質組成について我々が持っている知識の多くは、細胞を破砕し、それぞれのオルガネラに富んだ画分を遠心分離によって調製し、脂質を抽出した後、生化学的解析を行うという、50年前から行われている方法に大きく依存している。 細胞膜上で脂質が非対称に配列していることは良く知られているが、実際に詳細に調べられているのは赤血球膜だけである。 しかし現在この状況は大きく変わりつつある。 それは「脂質を見る」ことが可能になってきたからである。 とはいえ分子量が小さい脂質を可視化するためには構造に大きな変化を必要とする、脂質は遺伝子の直接的な産物でないため改変が難しい、特定の脂質を認識するプローブが乏しい、など脂質を見るうえにおいてはまだ様々な技術的な課題が存在する。今回のセミナーでは脂質をイメージングするアプローチについてわれわれの研究を含めて紹介し、どうしたら脂質を見ることができるようになるのか、脂質を見ることにより何がわかるのか、議論したい。

2006年10月12日 (木) 5時 分子遺伝研究室セミナー

演者: 松岡 聡 博士 (University of California, Davis, Section of Molecular & Cellular Biology)

近年植物バイオマス(セルロース)からのエネルギー生産が注目されている。しかしながらこれらバイオマスは不溶性という性質を持つが故に、その分解過程を通した資源の利用方法の確立が強く望まれている。ある種のClostridium属細菌は”Cellulosome"とよばれる高分子セルラーゼ複合体を形成することが知られている。Cellulosomeは(酵素活性を持たない)骨格タンパク質を中核とし、これに各種セルラーゼが結合していることが近年の研究で明らかにされてきた。本セミナーではClostridium cellulovoransのCellulosomeの解析と応用について述べる。

2006年6月26日 (月) 5時 学術講演会

演者: 若尾 節子 博士 (University of California, Berkeley)
題目:種子貯蔵脂質合成における還元力獲得機構:グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼの役割

細胞内の還元力は、脂肪酸合成、窒素固定などの還元反応に必須である。葉などの器官では光合成が主なNADPH生成源となり還元力を供給する一方、光の当たらない器官または暗条件下ではoxidative pentose phosphate pathway (OPPP: 酸化的ペントースリン酸経路) が主なNADPH供給源とされている。OPPPの最初、且つ律速段階である反応はグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)によって触媒される。シロイヌナズナのゲノムには6つG6PDH遺伝子が推定され、翻訳タンパク質のターゲットペプチドから4つは葉緑体に、2つは細胞質に局在すると推測されている。大腸菌でこれらの遺伝子を発現し、酵素を精製・解析したところ、6つのアイソザイムのうち5つが活性のあるG6PDHであることが確認された。葉緑体局在と予測されたアイソザイムだけがDTTによる酸化還元によって活性が可逆的に変化したことから、葉緑体型のG6PDHは光合成活性または酸化還元状態に強く影響されていると示唆された。それぞれのG6PDHアイソザイムの植物中での役割を調べるために、遺伝子発現レベルをRT-PCRで調べたところ、全てのアイソザイム遺伝子の発現が検出された一方で、それぞれ異なった器官特異的発現をすることがわかった。各アイソザイムの酵素活性をザイモグラムで調べたところ、根では3つの、他の器官では2つのアイソザイムの活性が検出された。これらの結果は、G6PDH活性の主な制御はmRNAレベルでは行われていないことを示している。ザイモグラムで検出されたアイソザイムをコードする遺伝子を同定するため、各アイソザイム遺伝子のT-DNAミュータントを解析した結果、根で検出された3つのアイソザイムのうち2つは細胞質局在型のG6PDHであるこがわかった。残る1つは葉緑体局在アイソザイムと考えられる。細胞質局在型アイソザイムそれぞれのT-DNAミュータント、またはそれらのダブルミュータントは、通常条件下でも酸化ストレス条件下でもwild-typeと比べ、生育に顕著な違いはみられなかった。しかし、2つの細胞質局在型G6PDHのうち1つを失った植物では、もう片方の活性が上昇していたことから、お互いに機能相補しているものと思われる。各ミュータントにおける種子貯蔵脂質を調べたところ、細胞質型のダブルミュータントで、脂質含量がwild-typeと比べて増加していることがわかった。貯蔵脂質合成の際には多量の還元力が必要と予測されるため意外な結果であったが、この増加に脂肪酸組成の変化が伴わなかったことから細胞内の還元力は減少していないと考えられた。細胞質型G6PDHが機能しないことによりおそらく解糖系、更には脂肪酸合成へのグリセロール 6-リン酸の流量が増加して、貯蔵脂質増加に至ったと推測された。これらの結果から、細胞質型G6PDH は貯蔵脂質合成の還元力の供給には関与していないと考えられた。

2006年6月20日 (火) 2時 学術講演会

演者: Paul Dupree Ph.D. (ケンブリッジ大学 植物細胞生物学リーダー)
題目: Identification and characterization of plant cell wall synthesis enzymes.

Dupree博士は植物細胞壁多糖生合成機構をゴルジ体局在性糖転移酵素ならびに糖ヌクレオチド輸送体、グリコシルフォスファチジルイノシトールアンカー(GPI-anchored) タンパク質の働き等に着目して研究を進めています。

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