教育目標

分子生物学は分子のレベルで生命現象を理解する学問です。生命現象は見かけが多様で複雑ですが、遺伝情報の中心原理(DNA → RNA → Protein)を前提に考えると、比較的簡単に理解できます。遺伝情報の中心原理とは、セントラルドグマともよばれ、バクテリアや植物、我々ヒトもこの原理に従っています。分子生物学科ではこの普遍的な原理の詳細なプロセス(遺伝子発現のしくみ)とこれを支える細胞の構成成分の役割(生体物質のはたらき)を、伝統ある生化学を基礎として学び、きちんと理解することを目標としています。また、急速な進展をしている全遺伝子の情報解析研究(ゲノムサイエンス)について学び、地球温暖化や環境問題の解決の基礎となる、光合成、環境応答、ストレス耐性などの高次の生命現象を理解するための考え方や研究手法を学びます。

分子生物学科1年生では人格形成に必要な一般的な教養教育科目の履修をすすめるため、従来よりも専門科目のカリキュラムを軽減しています。一方、大学院進学に重要な専門分野の英語力を養うためのカリキュラムを開始しています。2年生では、分子生物学と生化学の講義と基礎的な実験実習が始まります。3年生は、専門知識を身につける最も重要な時期であり、分子生物学、生化学、分子生理学に関する専門的な講義と実習をとおして、最先端の研究成果を理解する力を養います。4年生では、1年間かけて卒業研究に取り組みます。卒業研究では、学生実習とは異なり、あらかじめ答えのわからない研究課題に挑戦し、問題解決のための論理的思考能力や、努力、忍耐、勤勉性など社会においても重要視される素養を養います。また、第一線の生命科学に直接触れることにより、将来、科学者・研究技術者として活躍する研究領域・分野を見いだすこと、自らがいかに学問の形成に貢献できるのかを理解することを目標としています。

大学院博士前期課程では2年間かけてより専門的な研究(特別研究)に取り組みます。また、研究グループごとに開催される少人数制のゼミに加えて、学生同士が研究結果について討論しあう合同ゼミ、外部講師による集中講義などを履修します。将来、生命科学研究の発展やその応用に貢献する独創的な研究者に相応しい高度な知識と思考能力を身につけます。

教育内容の特徴と勉学支援

1. 実験実習の重視

実習風景

分子生物学は実験科学であるため、2、3年生の実験(それぞれ週1回、週2回、午後)は必修です。各研究室に属して行う4年生での卒業研究は、本学科で学んできたことの集大成・実践の場として非常に重要な意味を持ちます。卒業の年の2月に研究発表を行い、卒業論文を書いて卒業していきます。


2. 体系立った修得目標

授業内容案内(シラバス)にそった授業を行うので、毎回の授業の予習、復習が容易です。また、シラバスに盛り込めない最新の情報も適宜紹介しています。世界的に定評のある生化学、分子生物学の基礎的教科書を使用しています。講義では、各教科書の基礎的部分を教えるので、さらに深く勉強したい学生は、講義で扱わない教科書の部分や、教科書の参考文献をさらに勉強し、知識を増やすことができます。学年ごとに修得目標が定められており、学生は、この履修目標と自らの学習達成度を比較することにより、卒業に必要な単位を自らのペースで履修することが求められています。このようなプログラムを体験することにより、4年後には、大学院進学に十分な学力を身につけるとともに、生命科学全体に対して幅広い見識を持ち、将来の生命科学分野の研究者・技術者として方向性を定められるよう指導しています。講義について詳しくは、「カリキュラム」の項をご覧下さい。

3. きめ細かい指導

講義風景

1年生の前期に行われている生物英語Ⅰは、10人程度の少人数クラスで、分子生物学の基礎を英語で学習します。少人数なので、教員とうち解けながら授業を受けることができるので、学生の評判もたいへんよいです。通常の講義のあとは、オフィスアワー(教員が居室で待機する時間)があるので、勉学や学業以外の相談事に利用してください。

4. 勉学・生活状況の確認指導

分子生物学科には、卒業研究で研究室に配属されるまでの3年間、担任制度があります。勉学や、学業以外の相談事がある場合は、担任に相談することができます。そのほか、1年生の夏休み前、2年生の新学期および12月、3年生夏休み前に、学生全員との面談をとおして、学生の履修と生活の状況を把握し、丁寧に指導しています。

5. 充実した卒業研究

研究室風景

卒業研究では、国立大学ならではの体験ができます。すなわち、研究室に配属される人数が少ないので、各人が重複のない研究テーマをあたえられ、実験の設備も自由に使うことができます。3年生を対象に、研究室を選択するためのガイダンスを12月と2月に開いています。ガイダンスでは、教員による研究内容の紹介だけでなく、研究室の卒業研究生ならびに大学院学生との交流により、家族的な雰囲気のなかで研究の内容や、将来の進路について相談することができます。卒業研究を履修した学生の成長ぶりは、毎年、教員の目を驚かせるものがあります。卒論内容等について詳しくは、「在学生からのメッセージ」の項をご覧下さい。

6. 大学院における研究活動

生命科学専攻・分子生物学コースでは、植物科学や微生物学の分野で卓越した研究成果を上げている教員が、「特別研究」を指導します。毎年、多くの大学院生が国内外の学会、シンポジウム、ワークショップで研究発表を行っています。また、「世界環流プログラム」による学生の海外派遣、海外学生の受け入れ、著名研究者を講師とした研究セミナーも行っています。

卒業後の進路

学部卒業生の大半は大学院に進学しています。大学院進学者の半数以上が埼玉大学の大学院理工学研究科に進み、残りは他の国立大学の医・薬学系、理学系、および農学系大学院に進学しています。年度により多少の変動はありますが、過去6年間では卒業生の1割から3割が就職しています。就職先は主に化学・医薬系の企業で、その他には食品・情報系の企業、県・市などの公務員や中学校、高等学校の理科の教員です。就職状況について詳しくは、「卒業生の進路」の項をご覧下さい。大学院の理工学研究科前期課程の修了生は、主に化学・医薬や食品系の企業に就職しています。

分子生物学科としては、以下のような学科独自の進路指導を行なっています。(1)就職関係の講演会などの開催、(2)会社・研究所の訪問会の実施、(3)教育実習関係の指導などです。とりわけ(1)と(3)では、会社訪問・面接時や教育実習校における礼儀作法等の具体的な指導に注意を払っています。就職活動に多くの時間をとられ、卒業研究に支障をきたすことも起こり得ますが、学科としてはできるだけ卒業研究を修了できるように応援しています。これは、研究が大学および大学院教育の基盤をなす重要なものであり、たとえ成果は出なくとも、研究を「経験」することが将来役に立つだろうと信じているからです。学科の就職支援事業について詳しくは、「就職支援」の項をご覧下さい。

学外向けの教育活動

分子生物学科では、社会との連携を計るため、出張授業、SSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)・SPP(サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト)活動、アウトリーチ活動等を実施しています。活動の詳細については「学外向け教育活動」の項をご覧下さい。

お問い合わせ・申し込みは理学部学務係 (048-858-3345) までお願い致します。出張授業の情報は、理学部ホームページ でも公開されています。

ページトップへ