講演会&セミナー 2007年度

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2007年10月2日 (火) 16時20分ー17時50分 理学部3号館11番教室 分子生物学科セミナー

演者: 前田 宏 博士 (Purdue大学 
題目: 光合成生物におけるトコフェロールの機能

トコフェロールは生体膜の主要な脂溶性抗酸化剤であり、シアノバクテリアや植物・藻類の葉緑体で生合成される。哺乳類では必須栄養素ビタミンEとして知られているが、これら光合成生物におけるトコフェロールの役割は解明されていない。そこで我々は、Arabidopsisと Synechocystisのvitamin E (vte) 欠損株を用いて、光合成生物におけるトコフェロールの機能を調べた。

これらのvte欠損株と野性株を様々な環境ストレス下に置き比較したところ、低温条件下(7°C)で、Arabidopsis vte欠損株の生育が遅れ、種子の収量が減少することが解った。この表現型は光強度に依存せず、かつ光阻害や膜酸化も伴わなかったことから、低温誘導性の光酸化ストレスとは無関係であると考えられた。更に詳細な解析の結果、vte欠損株では、低温下で篩部柔組織特異的に発達する細胞壁(transfer cell wall)に 異常が生じ、成熟葉(ソース)から糖が輸送されないことが解った。このため、シンクへの糖供給が減少し、生育が抑制されたと考えられる。続いて、vte低温表現型の抑制変異の単離およびvte欠損株の膜脂質解析を行ったところ、糖輸送の上流でトコフェロール欠損が、小胞体における不飽和脂肪酸合成に影響を及ぼすことを見出した。以上の結果より、低温条件下でのArabidopsisにおいて、トコフェロールは葉緑体外の膜代謝および糖輸送に重要な役割を持つことが明らかとなった。

前田博士はミシガン州立大学のDellaPenna研で学位を取得した後、現在、Purdue大学のDudareva研で博士研究員をされています。セミナーでは学位論文に関する研究を中心に紹介していただきます。学術的な質問だけでなく、海外進学に関する質問にも答えていただけるので、海外留学に興味のある方も是非ご参加ください。

2007年9月3日 (月) 15時30分ー17時30分 理学部3号館11番教室 学術講演会

演者: 村田 紀夫 名誉教授 (基礎生物学研究所 
題目: ラン藻・植物のストレス耐性とベタイン

村田紀夫先生は、ラン藻と植物の光合成基礎研究、ストレス耐性、ストレスシグナル伝達など、幅広い分野で先駆的な研究をされた方です。今回、埼玉大学を訪問されるにあたり、セミナーをお願いしたところ、快くお引き受け下さいました。学生、院生諸君は、この機会に、独創的な研究がいかにして生まれるか、また、先生の人となりに触れることにより、科学者の志とはどのようなものかを体験していただければ幸いです。

2007年5月25日 (金) 16時20分ー17時50分 理学部3号館11番教室 分子生物学科セミナー

演者: 鈴木 基生 博士 (Robert Wood Johnson Medical School, NJ USA 
題目: 単一タンパク質生成システム(SPP system)を用いた高効率発現とNMRによる構造解析への応用

Most bacteria contain toxin genes which are usually coexpressed with their cognate antitoxin genes in the same operon. TheE. coli MazE/MazF system is the most extensively characterized toxin-antitoxin system. MazF is a sequence-specific endoribonuclease that exclusively cleaves ssRNAs at ACA sequences. Therefore, MazF expression results in nearly complete degradation of mRNA, leading to severe reduction of protein synthesis in conjunction with growth arrest. We speculated that an mRNA devoid of ACA sequences is likely to be stably maintained in the cells expressing MazF and exploited the unique cleavage properties of MazF to design a single-protein production (SPP) system in living E. coli cells. As the ACA triplet can be altered to cleavage-resistant sequences without changing the amino acid sequence of the protein, regardless of its position in the reading frame, we changed ACA sequences in the target gene. In order to examine signal to noise ratio, the ACA-less target gene was coexpressed along with MazF and new protein synthesis was monitored by isotopic labeling with [35S]-methionine. Concomitant expression of MazF and a target gene engineered to encode an ACA-less mRNA results in sustained and high level (up to 90%) target expression in the virtual absence of background cellular protein synthesis. Remarkably, target synthesis continues for at least 7 days, indicating that cells retain transcriptional and translational competence despite their growth arrest. Since growth of the MazF expressed cell is completely arrested, we achieved 97.5% of cost saving of expensive chemicals without sacrificing protein yield by condensing culture 40 times. In addition to demonstrating the efficacy of the SPP system for soluble proteins, the technology was also effective for overexpression of an integral membrane protein whose natural levels of expression are relatively low. We designed the SPP system in living E. coli cells that exploits the unique properties of MazF, a bacterial toxin that is an ssRNA- and ACA-specific endoribonuclease. The SPP system is a powerful protein expression technology that, in addition to being a highly effective method for production of proteins, yields unprecedented signal to noise ratios when new protein synthesis is monitored by isotopic labeling.

2007年3月19日 (月) 10時ー11時半 理学部3号館11番教室 分子生物学科セミナー

演者: 溝井 順哉 博士 (植物分子生理研究室所属)
題目: シロイヌナズナのCTP:ホスホリルエタノールアミンシチジリルトランスフェラーゼに関する分子遺伝学的研究

2007年3月14日 (水) 15時 理学部3号館11番教室 学術講演会

演者: 宮城島 進也 独立主幹研究員 (理化学研究所 フロンティア研究システム 宮城島独立主幹研究ユニット)
題目: 真核細胞による葉緑体とミトコンドリアの分裂制御機構

葉緑体とミトコンドリアは、それぞれシアノバクテリア、αプロテオバクテリアの細胞内共生によって成立したと考えられており、真核細胞内でバクテリアと同様に分裂して増殖する。しかしながら、葉緑体もミトコンドリアも、細胞内で自律的に増殖するわけではなく、その増殖は宿主の細胞によって完全に制御されている。両オルガネラの増殖制御機構の解明は、いかにして真核細胞が成立し進化してきたかということを理解する上でも重要である。その分裂機構は最近まで不明であったが、葉緑体とミトコンドリアの分裂面にリング上の装置が電子顕微鏡観察によって発見され(PD及びMDリング)、さらに、葉緑体については祖先のバクテリアと同様にFtsZタンパク質からなるリングを使って分裂することなどが示された。

両細胞内小器官の分裂機構を解明するため、これまでに、高等植物(シロイヌナズナ)、原始紅藻(シアニディオシゾン)、シアノバクテリア(シネココッカス)という3種類の材料を使って,主に以下のことを明らかにした。
(1)シアノバクテリアの細胞分裂変異体の解析とゲノム情報の比較により、シアノバクテリアの細胞分裂遺伝子を多数同定したが、藻類、植物のゲノムにはそのごく一部しか存在しないことがわかった。
(2)真核生物に特異的なGTPase、ダイナミンファミリーの一種が、ミトコンドリアだけではなく、葉緑体の分裂にも関与することが判った。
(3)シアニディオシゾンのミトコンドリアにおいてFtsZリング、MDリング、ダイナミンリングがこの順に形成されるのと同様に、葉緑体においてもFtsZ、PD、 ダイナミンがこの順にリングを形成することを明らかにした。
(4)葉緑体分裂変異体の解析から、新たな真核由来分裂因子PDV1を同定した。PDV1は外包膜貫通タンパク質で、ダイナミンの葉緑体分裂面への局在に必要であることが判った。
以上の結果、葉緑体の分裂は原核・真核ハイブリッドの装置によってひきおこされること、またその機構が始原的なミトコンドリアと構造、機序ともに酷似していることが示唆される。現在、さらに真核由来の葉緑体分裂因子を探索するとともに、細胞核に存在すると予想される分裂制御因子を探索中である。

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