講演会&セミナー 2016年度

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2017年 2月 28日 (火) 16時30分ー18時00分  理学部3号館11番教室 分子生物学科セミナー

演者:広岡和丈 准教授 (福山大学 生命工学部 生命工学科)
題目:根圏環境での生物間相互作用に関わる枯草菌の転写制御の研究

根圏に生息する枯草菌は、有機酸や鉄キレート剤であるシデロフォアを分泌することで植物の鉄イオン取り込みを助け、またバイオフィルムを形成することで根での病原菌の増殖を防いでおり、直接共生関係にはないが植物の生育促進に作用する有用根圏微生物であるとされている。根圏土壌には、糖やフラボノイド等の有機化合物が植物から浸潤している。根粒菌がフラボノイドに応答して根粒形成遺伝子群を誘導するという知見をもとに、枯草菌も根圏環境を認識するためのシグナル分子としてフラボノイドを利用すると考え、フラボノイドで誘導される遺伝子群を探索し、3つの型の転写因子(LmrA/QdoR、YetL、およびFur)による制御系を見出し、それらの応答特性・作用機序が互いに異なることを明らかにした1)-5)。これらの転写因子と共に標的遺伝子群の機能を解析することで、フラボノイドを介した枯草菌と植物、あるいは他の根圏微生物との相互作用機構を明らかにしようとしている。 ペクチン等の多糖類の成分、・フラボノイド等への糖修飾にラムノースが用いられており、根圏においてこの糖は炭素源になるだけでなく、植物病原菌の侵入や根粒菌の根粒形成過程といった、細菌と植物との相互作用において重要な役割を果たすことが示唆されている。我々は、枯草菌のラムノース異化を担うオペロンが2つの転写因子(RhaRおよびCcpA)によってラムノースに応答した制御とカタボライト制御を受けることを明らかにした6)。既に詳細に解明されている大腸菌のラムノース異化の転写制御機構と合わせて、枯草菌でのこの制御機構は他の細菌でのラムノース異化制御を解析する上でのモデルを提供するものである。 このような根圏環境でのシグナル分子に応答した転写制御機構を枯草菌を含めた土壌細菌で研究することで、植物の生育促進あるいは土壌環境浄化への応用につなげることを目指している。

参考文献 1) Hirooka, K., et al. J. Bacteriol. 189, 5170-5182 (2007) 2) Hirooka, K., et al. J. Bacteriol. 191, 3685-3697 (2009) 3) Hirooka, K., and Fujita, Y. Biosci. Biotechnol. Biochem. 74, 1030-1038 (2010) 4) Hirooka, K., and Fujita, Y. Biosci. Biotechnol. Biochem. 75, 1325-1334 (2011) 5) Hirooka, K. Biosci. Biotechnol. Biochem. 78, 1471-1484 (2014) 6)Hirooka, K., et al. J. Bacteriol. 198, 830-845 (2016)

2017年 2月 20日 (月) 16時20分ー17時50分  理学部3号館11番教室 分子生物学科・環境科学研究センター・ SUPER FORUM共催セミナー

演者:Dr. Jae-Ung Hwang (Pohang University of Science and Technology (POSTECH) )
題目:Root avoidance of toxic metals requires the GeBP-LIKE 4 transcription factor in Arabidopsis thaliana

Jae-Ungさんは、POSTECHのYoungsook Lee先生の研究室の特任助教で、今回、埼玉大学の頭脳循環プログラムで来日されます。これを機会に標記のセミナーをお願いしましたので、皆様ふるってご参加下さい。 この研究は埼玉大学・高木優先生、産総研・光田展隆博士との共同研究でもあります。

Plants reorganize their root architecture to avoid growth into unfavorable regions of the rhizosphere. In a screen based on chimeric repressor gene-silencing technology, we identified the Arabidopsis thaliana GeBP-LIKE 4 (GPL4) transcription factor as an inhibitor of root growth that is induced rapidly in root tips in response to cadmium (Cd). We tested the hypothesis that GPL4 functions in the root avoidance of Cd by analyzing root proliferation in split medium, in which only half of the medium contained toxic concentrations of Cd. The wild-type (WT) plants exhibited root avoidance by inhibiting root growth in the Cd side but increasing root biomass in the control side. By contrast, GPL4-suppression lines exhibited nearly comparable root growth in the Cd and control sides and accumulated more Cd in the shoots than did the WT. GPL4 suppression also altered the root avoidance of toxic concentrations of other essential metals, modulated the expression of many genes related to oxidative stress, and consistently decreased reactive oxygen species concentrations. We suggest that GPL4 inhibits the growth of roots exposed to toxic metals by modulating reactive oxygen species concentrations, thereby allowing roots to colonize noncontaminated regions of the rhizosphere.

2017年 1月 31日 (火) 16時30分ー17時40分  理学部3号館11番教室 分子生物学科・環境科学研究センター・ SUPER FORUM 共催セミナー

演者:Prof. Ling Yuan (ケンタッキー大学)
題目:The science behind the controversial genetic modified crops

In popular press, we often hear “GMO”. Not all GMO involved genetic engineering. We have been genetically modifying plants and animals for about 10,000 years, but we only genetically engineer plants for the last 30 years. The debate on GMO is taking place in the absence of appreciation of the history and science behind domestication and breeding of crop plants. My goal for this presentation is to help you (1) know more, and perhaps worry less, about the genetic engineering of food plants, (2) help you know more, and perhaps worry more, about “traditional” food plants produced by “conventional” breeding.

Professor Ling Yuan received his PhD in Plant Molecular Biology/Biochemistry at the University of Texas, Austin. He spent 5 years as a postdoctoral fellow and a Research Specialist at the University of California, San Francisco. From 1993-2003, he worked in the biotech industry as a Principal Scientist and a Program Manager. In 2003, he joined the faculty of the University of Kentucky and is currently a Professor in the Department of Plant and Soil Sciences. He is also Harold R. Burton Endowed Professor in Plant Biochemistry and the Research Director of KTRDC. Professor Yuan’s research focuses on plant gene regulation, protein engineering, and technology for plant genome modification. Research projects in his lab include understanding the control of plant gene expression by transcription factors, engineering metabolic pathways and enzymes to improve bioenergy production, applying novel technologies for plant genome modification, and elucidating gene network controlling the production of natural products with pharmaceutical and industrial values.

2016年 12月 7日 (水) 16時30分ー18時00分  理学部3号館11番教室 分子生物学科セミナー

演者:相馬 亜希子 助教 (千葉大学園芸学研究科)
題目:微生物をうごかす機能性 non-coding RNA

近年のトランスクリプトーム解析により、ゲノムには tRNA や rRNA 以外にも多種多様な非翻訳型 RNA (non-coding RNA; ncRNA)遺伝子が存在することが明らかされた。また、これら ncRNA は様々な方法でタンパク質遺伝子の発現を調節し、生命という精巧な分子機械の活動を巧妙に制御していることが分かってきた。 バクテリアや単細胞真核生物など、一見シンプルな生物にも機能性 ncRNA 分子は数多く存在し、「環境変動 への迅速な応答」という微生物の生存戦略に重要な役割を果たしている。バクテリアで機能が分かっている 主な ncRNA としてアンチセンス RNA や CRISPR の crRNA が挙げられ、その作用機作の解析が精力的に 行われている一方で、不明な点も残されている。我々はこれまでバクテリアや真核微生物を用いて機能性 ncRNA の同定と解析を行い、環境応答における ncRNA の役割について研究を進めてきた。本セミナーでは、 特にバクテリアの機能性 RNA 研究の流れを概説するとともに、我々が取り組んでいる大腸菌の抗生物質耐性や宿主感染に関わる ncRNA についてこれまでに得られた知見を紹介する(1, 2)。 多くの ncRNA は転写後に様々なプロセシングを受けることで機能的な成熟体となる。たとえば、 cis-splicing では余分な配列情報(イントロン)が「削除」され、trans-splicing では個別に転写された配列情報 が「連結」される。editing や modification では RNA の塩基配列の文字そのものが「書き換え」られる。さらに 我々の研究から、一部の微生物の逆転 tRNA の成熟化において RNA 断片の位置を「入れ替える」というプロセシングが行われていることが分かった(3-5)。この発見をきっかけに既存のゲノムデータベースが再解析さ れ、これまで意味がないと考えられていたゲノム領域から tRNA 遺伝子が多数発見された。このように ncRNA 遺伝子の情報はゲノム上に様々な形式で書き込まれている。生物はそこから色々なプロセシング方法で必要な情報を正しく取り出し、また、加工することで多種多様な機能性 RNA 分子をつくり出している。生命の設計図である DNA にどのような情報がどのように書き込まれているかを理解することは、ポストゲノム における重要な課題である。特に多くのプロセシングを受ける tRNA に着目し、近年明らかになってきた RNA プロセシングの多様性と、微生物における生物学的意義についても紹介する。

1. N. Sudo, et al. A novel small regulatory RNA Esr41 accelerates cell motility in enterohaemorrhagic Escherichia coli O157. (2014) J. General and Applied Microbiology 2. A. Soma. Identification and functional analysis of non-coding RNA from hemorrhagic Escherichia coli O157:H7 sakai. (2011) Inst. Ferment. Res. Comm. 3. A. Soma et al. Identification of highly-disrupted tRNAs in nuclear genome of the red alga, Cyanidioschyzon merolae 10D. (2013) Scientific Reports. 4. A. Soma. Permuted tRNA genes expressed via a circular RNA intermediate in Cyanidioschyzon merolae. (2009) J. Jpn. Soc. Extremophiles 5. A. Soma, et al. Permuted tRNA genes expressed via a circular RNA intermediate in Cyanidioschyzon merolae. (2007) Science

2016年 9月 8日 (木) 16時00分ー17時30分  理学部3号館11番教室 分子生物学科セミナー

演者:藤田 祐一 准教授 (名古屋大学 大学院生命農学研究科)
題目:シアノバクテリアの窒素固定

窒素分子をアンモニアに変換する窒素固定反応を触媒するニトロゲナーゼは、 酸素に触れると秒単位で失活してしまう脆弱な酵素である。このため、酸素が存在 する環境で窒素固定を行う生物は、ニトロゲナーゼが作動する環境を嫌気的に保つ メカニズムをもつ。シアノバクテリアは、植物と同じ酸素を発生する光合成を行う原 核生物であり、その約半数が窒素固定能を有する。酸素を作る光合成と酸素に弱い窒 素固定を一つの細胞の中でどのように両立しているのだろうか。最近私たちが同定 した転写制御タンパク質CnfRは、低酸素と窒素欠乏を感知して窒素固定遺伝子群の 発現を誘導する。CnfRを中心に、“酸素パラドクス”に対処するシアノバク テリアの分子メカニズムを考察したい。

2016年 8月31日 (水) 16時20分ー17時50分  理学部3号館11番教室 分子生物学科セミナー

演者:齊藤 成也 教授 (国立遺伝学研究所・集団遺伝研究部門)
題目:ゲノムからさぐる日本列島人の歴史

日本列島には、4万年ほど前から人間の住みついていたことが、石器の研究からわかっている。当時 は氷河時代だったため、海面が現在よりも低く、列島と大陸は近接していたので、移動が現在より も楽だったと考えられる。その後、16000年前ごろに縄文式土器の使用がはじまり、考古学で はそれ以降およそ3000年ほど前、弥生時代のはじまりまでを縄文時代とよぶ。われわれは、縄 文時代末期に現在の福島県北部に住んでいた縄文人の歯からDNAを抽出し、核ゲノムの1億150 0万塩基を決定した。これらのゲノム配列を他のゲノム配列と比較した結果、縄文人の祖先は現在の 東ユーラシア人が拡散する前、おそらく2万年以上前に、その祖先集団から分岐していたと推定し た。また、ヤマト人(列島中央部に居住する典型的な日本人)が縄文人から受け継いでいるゲノムは 全体の20%弱だと推定した。これまでの定説である「二重構造モデル」によれば、残りの80% 以上は、弥生時代以降に大陸から渡来した人々とその子孫から伝えられたことになる。ところが、 ヤマト人のゲノム多様性をこまかく調べると、その中にさらに内なる二重構造の存在する可能性がで てきた。地理的には、九州北部から関東地方までを貫く日本列島中央軸とその周辺に対応する。こ れは、弥生時代以降に遺伝的に異なる2集団がそれぞれ日本列島に渡来した結果なのか、あるいは すこし異なる時代的に2系統の集団が渡来した結果と考えられる。本セミナーでは、現在進行中の これらの研究成果を紹介する。

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