研究業績 2007年度
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原著論文発表
<分子統御・分子遺伝>
- Asai K, Inaoka T, Nanamiya H, Sadaie Y, Ochi K and Kawamura F (2007) Isolation and characterization of sporulation-initiation mutation in the Bacillus subtilis prfB gene. Biosci Biotechnol Biochem 71: 397-406
- 解説:全ての生物に共通に、蛋白質合成過程(翻訳)の終結(終止コドンの認識)にはRFと呼ばれる蛋白質が必要であり,prfBは細菌のRF因子の一つをコードする遺伝子である。枯草菌は胞子形成という一種の細胞分化能を有するが,我々は枯草菌prfBの変異解析により、翻訳の正確な終了が胞子形成の適切な開始に必要であることを示した。増殖から細胞分化への移行過程の解明につながる発見である。(朝井・定家)
- Asai K, Ootsuji T, Obata K, Matsumoto T, Fujita Y and Sadaie Y (2007) Regulatory role of RsgI in sigI expression inBacillus subtilis. Microbiology 153: 92-101
- 解説:シグマ因子は植物オルガネラや細菌に普遍的に存在する主要転写因子ファミリーである。枯草菌のシグマ因子の一つσI(sigI遺伝子にコード)は熱ショック応答に関与すると考えられている。今回我々はRsgI蛋白質がσIに直接結合して,熱ショックに応じてその活性を制御することを明らかにした。またその過程には分子シャペロンであるDnaKが関与すること,σIは熱ショックだけでなく栄養枯渇によっても活性が上昇することも同時に示唆した。細菌の転写調節の分子機構は複雑な制御を受けている。(朝井・定家)
- Dey A, Jenney FE Jr, Adams MW, Babini E, Takahashi Y, Fukuyama K, Hodgson KO, Hedman B and Solomon EI (2007) Solvent tuning of electrochemical potentials in the active sites of HiPIP versus ferredoxin., Science 318: 1464-1468
- 解説:フェレドキシンとHiPIPはどちらも鉄硫黄クラスターを持つ電子伝達タンパク質だが、それらの酸化還元電位は大きく異なっている。その理由は長い間不明であったが、本研究では、X線吸収分光法を用いた実験的解析と理論的な考察により、[4Fe-4S] クラスターの水和状態が、酸化還元電位に大きく影響していることを明らかにした。スタンフォード大との共同研究。(高橋)
- Shimomura Y, Kamikubo H, Nishi Y, Masako T, Kataoka M, Kobayashi Y, Fukuyama K and Takahashi Y (2007)Characterization and crystallization of an IscU-type scaffold protein with bound [2Fe-2S] cluster from the hyperthermophile, Aquifex aeolicus. J Biochem 142: 577-586
- 解説:IscUは鉄硫黄クラスターの生合成において中間体形成部位として機能する鍵タンパク質だが、そのクラスターが著しく不安定なためこれまでホロ型の解析は難航していた。本研究では、超好熱菌Aquifex aeolicusのIscUが比較的安定に[2Fe-2S]クラスターを保持することを見出し、さらにAsp38をAlaに置換することでクラスターの安定化を達成した。意外にも、ホロ型IscUは三量体であり、その三量体当たり1個の [2Fe-2S] クラスターを保持することが判明した。また、ホロ型IscUの結晶化にも初めて成功し、構造解析への道を拓くとともに、この三量体が構造的に安定なオリゴマー状態であることを示した。(高橋)
<遺伝情報>
- Nagahama H, Oshima T, Mori H, Matsumoto K and Hara H (2007) Hyperexpression of the osmB gene in an acidic phospholipid-deficient Escherichia coli mutant. J Gen Appl Microbiol 53: 143-151
- 解説:大腸菌のpgsA完全欠損変異株の42℃での生育欠損(溶菌)の原因を調べるために、DNAマイクロアレー解析により、この変異株で高温で特異的に発現レベルが変動している遺伝子を探索した。発現上昇がみられた遺伝子のうち、特に、浸透圧上昇によって発現誘導されることが知られていた外膜リポタンパク質の遺伝子であるosmBに注目して解析を進めた。この遺伝子のpgsA変異株での高温による発現上昇はRcsリン酸リレーシグナル伝達系の活性化によることを示し、osmB欠損変異によってはpgsA変異株の高温感受性は抑圧されないことから、osmBだけが溶菌の原因ではないものの、Rcs系の欠損によって高温でも生育できるようになっていたpgsA変異株でも、Rcs系制御下の遺伝子群のうちosmB遺伝子だけを過剰発現させると42℃で溶菌することから、osmB遺伝子発現上昇が、42℃での生育欠損の主たる要因のひとつと考えられることを示した。(松本・原)
- Matsuura T, Usami R, Yoshida H, Hara H and Matsumoto K (2007) Characterization of a novel esterase YkoN fromBacillus subtilis Marburg. J Jpn Soc Extremophiles 6: 32-37
- 解説: 枯草菌の脂質合成に関与する遺伝子を検索する過程で見出されたykoN の遺伝子産物は、微生物のリパーゼ/エステラーゼに見られる5アミノ酸のコンセンサス配列 (Gly/Ala-X-Ser-X-Gly) と一致する配列をもつ。 この遺伝子産物を精製して、その性質を調べ、短鎖の脂肪酸エステルを好んで分解する新規なエステラーゼ活性をもつことを明らかにした。(松本・原・松岡)
- Matsuura T, Terayama T, Usami R, Yoshida H, Hara H and Matsumoto K (2007) Involvement of YkoN in production of a new phospholipid in Bacillus subtilis Marburg. J Jpn Soc Extremophiles 6: 38-44
- 解説: 枯草菌ykoN は短鎖の脂肪酸エステルを好んで分解するエステラーゼ活性をもつ酵素をコードする遺伝子である。ykoN は胞子形成期に発現が上昇しており、この時期に、これまでに知られていない新規なリン脂質が生成されることを見出した。変異ykoN をもつ株では、この新規脂質の生成量が1/10以下となることから、ykoN がこの新規リン脂質の生成に関与していると推定した。更に、脂質合成に欠損をもつ様々な大腸菌株でykoNを発現させ、生成される脂質を解析し、新規リン脂質の生成にはホスファチジルグリセロールを必要とすることを示した。(松本・原)
<生体物質>
- Kotake T, Hojo S, Yamaguchi D, Aohara T, Konishi T and Tsumuraya Y (2007) Properties and physiological functions of UDP-sugar pyrophosphorylase in Arabidopsis. Biosci Biotech Biochem 71: 761-771
- 解説: 植物には単糖類を再利用する特異な経路が存在する(Kotake et al. 2004 J.B.C.)。植物に特有のUDP-糖ピロホスホリラーゼ(USP)の生理的な役割をシロイヌナズナを用いて調べた。USP遺伝子はほぼ全ての組織で発現しており、USP は恒常的に単糖類の再利用に関わることが示唆された。またUSP遺伝子を破壊すると花粉が正常に発達せず、生殖能力を完全に失った。USPは植物特有であるが植物種間で高度に保存されており、少なくとも植物の生殖に不可欠な役割を持つことが明らかになった。(円谷・小竹)
- Konishi T, Kotake T and Tsumuraya Y (2007) Chain elongation of pectic beta-(1->4)-galactan by a partially purified galactosyltransferase from soybean (Glycine max Merr.) hypocotyls. Planta 226: 571-576
- 解説: 植物細胞壁を構成するペクチンの合成酵素に関する研究である。先(2004年)にダイズのミクロソーム画分(細胞内膜画分)に、ペクチン側鎖のβ-1,4-ガラクタンを合成する酵素活性を見いだした。本酵素(ガラクトース転移酵素)をかなり精製して、試験管内で約40のガラクトースが連なる天然に見出されるのと同じペクチンのガラクタンを合成した。試験管内での高分子天然型細胞壁ガラクタン合成の最初の研究報告である。(円谷・小竹)
<代謝>
- Muramatsu M and Hihara Y (2007) The coordinated high-light response of genes encoding subunits of photosystem I is achieved by AT-rich upstream sequences in the cyanobacterium Synechocystis sp. PCC 6803 J Bacteriol 189: 2750-2758
- 解説: Muramatsu and Hihara (2006)におけるpsaAB遺伝子に引き続き、光化学系Ⅰ小サブユニットの一つをコードするpsaD遺伝子のプロモーター構造を解析した。その結果、psaAB、psaDプロモーターに共通して強光応答に関わる領域として、コアプロモーター領域直上流のATリッチ配列を同定した。次に、光化学系Ⅰの他のサブユニット遺伝子も同様な仕組みで強光応答を示すのかどうかを検証した。psaC、psaE、 psaK1、 psaLIの各遺伝子プロモーターについて調べたところ、いずれの場合にも、転写開始点(+1)から見て-70から-46に位置するATリッチ領域があれば、光化学系Ⅰ遺伝子に特有の強光応答パターンを示すのに十分であることが明らかになった。同定された調節領域は、弱光下でプロモーター活性を高く保つために必要であり、強光下に移すとこの領域を介した正の調節が一過的に失われるため、系Ⅰ転写産物の一様な減少が実現されるということのようである。今後はこの調節に関わる因子の単離を行って行きたいと考えている。(日原)
- Aurora R, Hihara Y, Singh AK and Pakrasi HB (2007) A network of genes regulated by light in cyanobacteria. OMICS. 11: 166-185
- 解説: 弱光下から強光下に移したシアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803について、どのような遺伝子発現変化が見られるかを、以前、DNAマイクロアレイ解析の手法を用いて調べたことがあった (Hihara et al. Plant Cell 13: 793-806, 2001) 。本研究では、セントルイスのWashington University のR.Aurora 博士、H. Pakrasi 教授のご助力を得て、このデータを、遺伝子共発現ネットワーク解析の手法を用いて、さらに詳細に解析してみた。すると、強光下での遺伝子発現について、従来の解析方法では見えてこなかったいくつかの知見が得られた。一例として、強光下で鉄、硫黄ホメオスタシスに関わる遺伝子群の発現変動が起きていることが挙げられる。培養実験を行ったところ、実際に強光下での生育に硫黄の供給が重要であることが示され、この遺伝子発現変動は生理的に重要な意味を持つと考えられる。(日原)
<植物分子生理>
- Awai K and Wolk CP (2007) Identification of the glycosyl transferase required for synthesis of the principal glycolipid characteristic of heterocysts of Anabaena sp. strain PCC 7120. FEMS Microbiol Lett 266: 98-102
- 解説: 酸素発生型光合成を行う原核生物であるラン藻には、大きく分けて単細胞型と糸状性型の2種が存在する。このうち、糸状性ラン藻では窒素源が不足すると、数珠状に連なっている細胞の一部が空気中の窒素を固定する細胞(ヘテロシスト)へと分化し、他の細胞へ窒素源を供給する。窒素同化酵素(ニトロゲナーゼ)は酸素に非常に弱いことから、ヘテロシストは特別に厚い細胞壁と糖脂質の層を作って、外から酸素が入るのを防ぐことが知られていた。本論文では、脂質層の構成成分である糖脂質合成の最後の反応を触媒する糖転移酵素の遺伝子を、ゲノム科学的な解析により同定した。(粟井)
- Awai K, Watanabe H, Benning C and Nishida I. (2007) Digalactosyldiacylglycerol is required for better photosynthetic growth of Synechocystis sp. PCC6803 under phosphate limitation. Plant Cell Physiol 48: 1517-1523
- 解説:酸素を発生する光合成生物は、シアノバクテリアから高等植物まで多様である。光合成の基本的なしくみは、これらの光合成生物で広く保存されていると考えられがちである。しかし、実際は、進化の過程で遺伝子レベルでの大きな変革が起こっている。われわれは、光合成装置を取り巻く膜脂質の生合成のしくみを詳細に解析することから、シアノバクテリアから葉緑体へと進化した過程で起こった、遺伝子レベルの大きな変革の一端を明らかにしたいと考えている。葉緑体およびその進化的な祖先であるシアノバクテリアの光合成膜には、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)という糖脂質が30%近く含まれ、両者でDGDG生合成経路は共通であると考えられてきた。ところが、すでに単離されている植物のDGDG合成酵素遺伝子DGD1の相同遺伝子は、シアノバクテリアのゲノムには見あたらない。そこで、シアノバクテリアには植物とはタイプの異なるDGDG合成遺伝子が存在すると予想された。本論文では、糖転移酵素の活性モチーフ検索を主な手法として、シアノバクテリアのDGDG合成酵素遺伝子dgdAを単離することに成功している。dgdA遺伝子は、単細胞性紅藻類には存在するが、緑藻類や高等植物には存在しない。従って、DGDG生合成のしくみは、ラン藻類から緑藻類へ移行する過程のどこかで大きな変革に遭遇したと考えられる。
dgdA遺伝子が単離されたことにより、その遺伝子を破壊する実験が可能になった。このような遺伝子破壊実験は、遺伝子の生理的な機能を解明する上で不可欠である。dgdA遺伝子の破壊では、シアノバクテリアは無機栄養塩が供給される限り大きな問題なく生育することがわかった。このことは、植物のdgd1破壊株が極度に矮化することと対照的である。一方、dgdA破壊株をリン酸欠乏培地で培養すると、生育に遅れが見られた。このことは、リン酸塩の欠乏した自然環境では、dgdA遺伝子はシアノバクテリアの生育によりよい効果をもたらすと考えられる。今後は、より多くのシアノバクテリアの株を用いて、今回観察された結果を検証する予定である。(粟井・西田)
- 解説:酸素を発生する光合成生物は、シアノバクテリアから高等植物まで多様である。光合成の基本的なしくみは、これらの光合成生物で広く保存されていると考えられがちである。しかし、実際は、進化の過程で遺伝子レベルでの大きな変革が起こっている。われわれは、光合成装置を取り巻く膜脂質の生合成のしくみを詳細に解析することから、シアノバクテリアから葉緑体へと進化した過程で起こった、遺伝子レベルの大きな変革の一端を明らかにしたいと考えている。葉緑体およびその進化的な祖先であるシアノバクテリアの光合成膜には、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)という糖脂質が30%近く含まれ、両者でDGDG生合成経路は共通であると考えられてきた。ところが、すでに単離されている植物のDGDG合成酵素遺伝子DGD1の相同遺伝子は、シアノバクテリアのゲノムには見あたらない。そこで、シアノバクテリアには植物とはタイプの異なるDGDG合成遺伝子が存在すると予想された。本論文では、糖転移酵素の活性モチーフ検索を主な手法として、シアノバクテリアのDGDG合成酵素遺伝子dgdAを単離することに成功している。dgdA遺伝子は、単細胞性紅藻類には存在するが、緑藻類や高等植物には存在しない。従って、DGDG生合成のしくみは、ラン藻類から緑藻類へ移行する過程のどこかで大きな変革に遭遇したと考えられる。
- Lu B, Xu C, Awai K, Jones AD and Benning C (2007) A small ATPase protein of Arabidopsis, TGD3, involved in chloroplast lipid import. J Biol Chem 282: 35945-35953
- 解説:植物の葉緑体は、植物細胞の(ほとんど)すべての脂肪酸の生合成を担いながら、自らの膜脂質をすべて単独で合成することはできない。糖脂質の生合成は、葉緑体による原核型経路と、細胞質の小胞体との連携による真核型経路が知られている。後者では、葉緑体で合成された脂肪酸が、いったん小胞体へ輸送され、脂質に組み込まれた後、葉緑体の包膜に戻される。このオルガネラ間の脂質輸送に問題があると、葉緑体の糖脂質の量が低下することになる。tgd変異株は、当初葉緑体糖脂質合成変異株dgd1の抑圧変異株として単離されたが、詳細な解析の結果、上記真核型経路が阻害された変異株であることがわかり、各変異株の遺伝子構造が明らかにされている。最初に同定されたTGD1遺伝子がコードするタンパク質は、バクテリア型マルチサブユニットタイプのABCトランスポーターの膜透過タンパク質であり、細胞膜を貫通して、物質を透過する機能を持つと推定された。次に明らかとなったTGD2は、同じくバクテリア型マルチサブユニットタイプのABCトランスポーターの基質結合タンパク質であり、葉緑体糖脂質合成の前駆体であるホスファチジン酸を特異的に結合することがわかった。また、TGD1、TGD2タンパク質ともに、葉緑体内胞膜に局在することが明らかとなっている。以上の結果から、これらTGDタンパク質は、脂質合成の前駆体を小胞体から葉緑体へ輸送するタンパク質複合体を形成していると考えられた。本論文では、このマルチサブユニット型ABCトランスポーター複合体にエネルギーを供給すると考えられる、ABCタンパク質をコードするTGD3遺伝子を同定している。このタンパク質は葉緑体内に局在し、in vitroでATPase 活性を示した。また、TGD3遺伝子発現抑制株ではtgd1、tgd2変異株と同様の表現型を示したことから、TGD3はTGDトランスポーター複合体の一因子として機能していると推測された。この研究は、ミシガン州立大学のC. Benning博士との共同研究である。(粟井)
- Fujiki Y, Yoshimoto K and Ohsumi Y (2007) An Arabidopsis homolog of yeast ATG6/VPS30 is essential for pollen germination. Plant Physiol 143: 1132-1139
- 解説:生体の膜構造にみられるリン脂質の一つホスファチジルイノシトール3リン酸(PtdIns3P)は、細胞増殖や膜交通の制御に働くことが酵母や動物で知られている。一方、陸上植物ではPtdIns3Pの生理機能に関する分子レベルでの理解はあまり進んでいない。本研究ではPtdIns3P合成に携わると考えられるタンパク質の一つAtg6(Vps30)に着目し、高等植物(シロイヌナズナ)のATG6遺伝子がオートファジーや液胞タンパク質輸送などの膜動態に機能することを確認した。また、意外にもATG6遺伝子を破壊した植物は雄性不稔となることが分かった。詳細な解析の結果、PtdIns3Pが植物の有性生殖(花粉管発芽のシグナリング)に重要な働きをしていることが明らかとなった。(藤木)
<分子遺伝・遺伝情報・細胞生化学 三研究室 合同>
- Sadaie T, Sadaie A, Takada M, Hamano K, Ohnishi J, Ohata N, Matsumoto K and Sadaie Y (2007) Reducing Sludge Production and the Domination of Comamonadaceae by Reducing the Oxygen Supply in the Wastewater Treatment Procedure of a Food-Processing Factory. Biosci Biotechnol Biochem 71: 791-799
- 解説:冷凍食品加工工場から出る排水を、微生物で浄化する施設の、微生物集団の構成を、リボソーム遺伝子で解析した論文です。運転状況を変えて浄化施設を改良 したら、微生物集団の構成が大きく変動したことを記したとても役に立つ貴重な論文です。浄化槽や堆肥、あるいは畑の土壌にはおびただしい種類と数の微生物が棲息していますが、これらをうまく飼いならすためには、微生物のゲノムサイエンスの知識が不可欠となってきました。また、このことはより単純な発酵食品製造過程にもあてはまることなのです。分子生物学の基礎研究が医学ばかりではなくこのような人間社会の基盤を支える分野でも役に立つのです。(定家)
学会発表
3月25日-3月29日にタイのバンコクにあるChulabhorn Research Instituteで開催されたThe 6th International Workshop on the Molecular Biology of Stress Responses (http://www.cellstress2008.com/CS2008/index.php)で招待講演
- 発表者: 仲本準
題目: Molecular chaperones in cyanobacteria: Regulation and function
3月26日-3月29日に名城大学・天白キャンパスで開催された日本農芸化学会2008年度大会で研究発表
- 発表者:定家 多美子、定家 綾、松本 幸次、大西 純一、定家 義人
題目:低曝気活性汚泥 - 発表者:朝井 計、堂元 沙織、定家 義人
題目:枯草菌の自己溶菌の転写制御機構 - 発表者:松岡 聡、 Roy Doi
題目:枯草菌を用いたClostridium cellulovoransのミニセルロソームの構築
3月20日-3月22日 札幌コンベンションセンターで開催された第49回日本植物生理学会年会で研究発表
- 発表者:西田生郎、矢野亮一、伊藤利章、松本光生、藤川清三
題目:伴細胞-篩要素複合体間の二次原形質連絡の分子構築機構 - 発表者:松本光生、小竹敬久、円谷陽一、西田生郎
題目:伴細胞-篩要素複合体間の二次原形質連絡形成に関わるペクチン酸リアーゼRSX1の酵素学的解析 - 発表者:渡辺英男、粟井光一郎、Christoph Benning、西田生郎
題目:リン酸欠乏条件下におけるチラコイド膜糖脂質の役割 - 発表者:秋元麻衣、岡崎久美子、粟井光一郎、西田生郎
題目:シアノバクテリアのC18脂肪酸特異的リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼのats2変異株における発現 - 発表者:山岡靖代、溝井順哉、西田生郎
題目:シロイヌナズナの生殖器官形成におけるホスファチジルセリンの機能 - 発表者:関口陽、溝井順哉、西田生郎
題目:シロイヌナズナのCDP-コリン合成酵素欠損株における花のホメオティック変異とB クラス遺伝子のメチル化との関係 - 発表者:飯塚文絵、石澤敏洋、小竹敬久、円谷陽一
題目:アラビノガラクタン-プロテインの糖鎖合成に関わるβ-ガラクトース転移酵素 - 発表者:小竹敬久、高場雅人、高田遼平、山口大介、折田隆広、金子哲、円谷陽一
題目:可溶性UDP-グルコース4-エピメラーゼによるUDP-L-アラビノースとUDP-キシロースの変換反応 - 発表者:清野友里絵、村松昌幸、日原由香子
題目:Synechocystis sp. PCC 6803の光化学系I遺伝子群の統一的な強光応答メカニズムの解明 - 発表者:石井愛、日原由香子
題目:シアノバクテリアSynechocystis sp.PCC 6803における推定AbrB型転写制御因子の機能解析 - 発表者:高橋秀行、内宮博文、日原由香子
題目:光独立栄養条件下・光混合栄養条件下におけるシアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803の代謝解析 - 発表者:Kollimalai Sakthivel、渡邉達郎、仲本準
題目:酸化ストレス下における、シアノバクテリア低分子量熱ショックタンパク質によるフィコシアニンと光化学系の安定化 - 発表者:末岡啓吾、山崎映明、檜山哲夫、仲本準
題目:好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus elongatusのNTRCは2-Cys peroxidredoxin BAS1への電子供与体として機能する - 発表者:岸菜々美、鳴海尚一、渡辺智、吉川博文、仲本準
題目:シアノバクテリアSynechococcus sp. PCC 7942におけるHtpGとDnaKシャペロン系との相互作用 - 発表者:皆川俊、仲本準
題目:シアノバクテリアHtpGのシャペロン作用に及ぼすATP、ADP、AMP-PNP及びRadicicolの影響 - 発表者:藤田清仁、太田にじ
題目:原始紅藻Cyanidioschyzon merolaeにおけるrbcL-rbcS-cbbXオペロンの解析 - 発表者:小山陽亮、太田にじ
題目:原始紅藻 Cyanidioschyzon merolae の secA遺伝子の機能解析 - 発表者:佐久間輝明,是枝晋,大西純一
題目:アラビドプシス・グリセロール-3- リン酸輸送体ホモログ破壊株の性質
3月6日-3月8日 大阪大学・吹田キャンパスで開催された第2回日本ゲノム微生物学会年会で研究発表
- 発表者:大森 正之
題目:理工宇宙環境におけるゲノム微生物研究 - 発表者:朝井 計
題目:枯草菌の複数シグマ因子による転写制御ネットワーク解明の試み - 発表者:山野井 玲、朝井 計、定家義人
題目:枯草菌グルコマンナン利用オペロンの解析 - 発表者:矢野 晃一、朝井 計、定家義人
題目:枯草菌と好熱性細菌Geobacillus kaustophilusにおけるECFシグマ因子の比較解析 - 発表者:Yee Lii Mien、朝井 計、定家義人
題目:バクテリオファージSP10の増殖に関するnonA遺伝子の解析
1月17日-1月18日 東京で開催された宇宙利用シンポジウム第24回大会で研究発表
- 発表者:小竹 敬久、五十嵐 俊、曽我 康一、若林 和幸、保尊 隆享、円谷陽一
題目:重力がアラビノガラクタン-プロテインの発現に与える影響
1月6日-1月10日 韓国の浦項 (Pohang)で開催されたPOSTECH 11th Plant WInter Conferece 2008で招待講演
- 発表者:西田生郎
題目:植物の二次プラズモデスマータの形成機構
また、Youngsook Lee教授の研究室で大学院生と研究に関するディスカッションをおこない、また、脂質抽出の実験指導を行った。POSTECHは韓国の製鉄会社POSCOが出資している理系の大学で、私立大学であるが放射光加速器を持っている。生命科学、薬学、工学の研究が盛んで、Nature、Scienceクラスの業績が着々と上がっている。スタッフ、大学院生共に非常に活気があり、英語もうまい。日本も負けてはいられないという思いを強くして帰ってきた。特に、私企業が大学の経済的支援をしているところに感心した。教授には宿舎が無料で提供され、学生の寄宿舎も入居費は無料というには大変驚かされた。POSCOインターナショナルセンターという会議場兼ホテルも会社からの寄付である。埼玉大学も、理念のしっかりしたスポンサーがいるならば私立大学も悪くはないと思った。
12月21日-12月23日 パシフィコ横浜で開催された「日本生物物理学会第45回年会」で研究発表
- 発表者:岡本直樹、光岡薫、仲本準
題目:シアノバクテリアにおけるフィコビリソーム超分子会合体の構築及び分解への分子シャペロンHtpG(Hsp90)の関与
12月11日-12月15日 パシフィコ横浜で開催された「第30回日本分子生物学会年会・第80回日本生化学会大会 合同大会」で研究発表
[口頭発表]
- 発表者:岩下静香、渡邊倫史、原弘志、松本幸次
題目:細胞死を導く大腸菌リポタンパク質EcnBの解析 - 発表者:松本健二、周藤 悟志、柴康弘、宮川宏義、松本幸次、原弘志
題目:大腸菌Rcsリン酸リレー系のシグナル伝達制御機構の解析
[ポスター発表]
- 発表者:松浦孝枝、寺山泰司、宇佐美論、原弘志、松本幸次
題目:枯草菌YkoNの酵素機能及び生理機能解析 - 発表者:内山純爾、原弘志、松本幸次
題目:酸性リン脂質欠損による大腸菌σs因子の蓄積機構の解析
12月3日-12月4日 かずさDNA研究所で開催された「ラン藻の分子生物学」で研究発表
[招待講演]
- 発表者:仲本準
題目:熱ショックタンパク質ーシアノバクテリアにおける、その発現と機能 - 発表者:日原由香子
題目:Synechocystis sp. PCC 6803の光合成系I遺伝子群の光強度依存的な転写調節機構 - 発表者:粟井光一郎
題目:Synechocystis sp. PCC6803でDGDGはリン酸欠乏条件での生育に必須である
[ポスター発表]
- 発表者:肥後明佳、池内昌彦、大森正之
題目:糸状性ラン藻Anabaena sp. PCC 7120の乾燥回復過程におけるcAMP信号伝達系 - 発表者:末岡啓吾、山崎映明、檜山哲夫、仲本準
題目:Thermosynechococcus elongatus においてNTRCは2-Cys Peroxiredoxin に還元力を供給する - 発表者:齋藤勝和、渡辺智、小林利彰、吉川博文、仲本準
題目:Synechococcus elongatus PCC7942のUroporphyrinogen decarboxylase はHtpGと相互作用して活性が抑制される - 発表者:石井愛、日原由香子
題目:Synechocystis sp. PCC 6803 における推定転写制御因子Sll0822の機能解析
11月30日-12月2日 東京・池尻大橋の大橋会館で開催された「第2回アジア植物脂質シンポジウム(2ASPL)」で研究発表
ASPLはアジアの植物脂質研究者が2年に一度集う国際研究集会で、参加者は、外国人研究者14名、外国人若手研究者/大学院生11名、国内研究者28名、国内大学院生32名、総勢85名でした。タイ、韓国、中華人民共和国、台湾、ロシア、マレーシア、インド、デンマークおよび香港など、多くの国・地域から参加いただけたことに組織委員長として感謝申し上げます。一方で、シンポジウムの参加を理由に入国審査書類を準備・申請しながら、当日会場に現れないというケースが数例目立ち、国際会議参加を理由にした不正入国について、今後注意を喚起する必要があると感じました。第3回シンポジウムは2009年に東京工業大学・太田啓之教授を組織委員長として開催されることが決定しています。ASPLがアジアの植物脂質研究者の交流の場として定着したことは大変喜ばしいことです(西田)。
- 発表者:西田生郎
題目:A reverse genetic study of phospholipid biosyntheses in Arabidopsis thaliana - 発表者:粟井光一郎
題目:Digalactosyldiacylglycerol is required for better photosynthetic growth ofSynechocystis sp. PCC6803 under phosphate limitation - 発表者:渡辺英男
題目:Digalactosyldiacylglycerol is required during phosphate deprivation in Synechocystis sp. PCC6803
11月18日-11月23日 松島で開催された第9回「国際冠水学会」 (9 th. Conference of he International Society for Plant Anaerobiosis)にて研究発表
- 発表者:小竹敬久
題目:「β-1,3:1,4-Glucan synthase activity in rice seedlings under water」(冠水条件下のイネ実生のβ-1,3:1,4-グルカン合成活性)
9月27日-9月28日 お茶の水大学で開催された「日本宇宙生物科学会」で研究発表
- 発表者:小竹敬久
題目:植物のプロテオグリカンAGPの重力による発現変化
9月19日-9月21日 岡山大学で開催された「第79回日本遺伝学会大会」にて研究発表
[ミニシンポジウム 「プログラム死:単細胞微生物での機構と意義」]
- 発表者:原弘志、岩下静香、松本健二、柴康弘、鈴木基生、渡邊倫史、松本幸次
題目:大腸菌のリポタンパク質成熟不全による細胞死
[一般講演]
- 発表者:イーリーメン、松岡聡、朝井 計、定家義人
題目:バクテリオファージSP10 の増殖に関するnonA遺伝子の解析 - 発表者:周藤悟志、日下仁、原弘志、松本幸次
題目:枯草菌カルジオリピン合成酵素の局在機構の解析 - 発表者:花島功、太田にじ
題目:原始紅藻Cyanidium caldarium RK- 1株におけるcDNA ライブラリーの作製 - 発表者:朝井計、松崎邦彦、定家義人
題目:枯草菌シグマ因子群によるネットワーク制御機構 - 発表者:橋本理尋、原弘志、朝井計、定家義人、松本幸次
題目:膜主要酸性リン脂質欠乏条件下での枯草菌シグマ因子の活性化 - 発表者:山野井玲、仲舘久、福井玲子、朝井計、定家義人
題目:枯草菌におけるグルコマンナン利用オペロンの抑制物質の解析 - 発表者:福井玲子、伊藤寛人、志村太輔、朝井計、定家義人
題目:枯草菌のyesM / yesN 二成分制御系レギュロン候補遺伝子のオペロン構造の解析 - 発表者:矢野晃一、朝井計、定家義人
題目:蛍光標識RNA によるin vitro transcription system の構築とその適応例
8月12日-8月17日 デンマークのコペンハーゲンで開催された国際細胞壁会議 (XIth Cell Wall Meeting) にて研究発表
- 発表者:小竹敬久、北條祥子、田島範明、円谷陽一
題目:A bifunctional enzyme with L-fucokinase and GDP-L-fucose pyrophosphorylase activities involved in salvage pathway of L-fucose in Arabidopsis. - 発表者:金子哲、一ノ瀬仁美、小竹敬久、円谷陽一
題目:Characterization of exo-beta-1,3-galactanases from several organisms. - 発表者:古西智之、小竹敬久、Dina Soraya、金子哲、五十嵐圭日子、鮫島正浩、石井忠、円谷陽一
題目:Degradation of the carbohydrate moieties of arabinogalactan-proteins by microbial beta-glucuronidases.
8月23日-8月26日 ハンガリーのブダペストで開催された、細胞ストレス国際学会主催の第3回国際会議 (3rd Cell Stress Society International Congress on Stress Responses in Biology and Medicine) にて招待講演
- 発表者:仲本準
題目:Roles of molecular chaperones in quality control of membranes and embrane associating proteins in prokaryotes.
8月1日-8月3日 九州大学で開催された「第27回日本糖質学会」で研究発表
- 発表者:古西智之、小竹敬久、Dina Soraya、松岡浩司、小山哲夫、金子 哲、五十嵐圭日子、鮫島正浩、円谷陽一
題目:アラビノガラクタン-プロテインの糖鎖のβ-グルクロニダーゼによる分解 - 発表者:青原 勉、小竹敬久、円谷陽一、川崎信二
題目:イネのカマイラズ遺伝子BC5は節の厚壁組織で二次細胞壁の構築に関与する
7月17日-7月18日 静岡県藤枝市で開催された「第4回21世紀大腸菌研究会」にて研究発表
- 発表者:内山純爾、松本幸次
題目:酸性リン脂質欠損によるシグマS蓄積機構の解析
7月14日 東京大学で開催された「ラン藻ゲノム研究交流会」にて研究発表
- 発表者:大森正之
題目:Anabaena sp. PCC 7120のマイクロアレイ解析 - 発表者:日原由香子
題目:Synechocystis sp. PCC 6803の強光下における遺伝子発現調節
6月24日-6月28日 イタリアのピサで開催された「グラム陽性細菌のゲノム機能国際会議 (International Conference on Functional Genomics of Gram-Positive Microorganisms)」にて研究発表
- 発表者:定家義人
題目:A Bacillus subtilis strain without functional ECF sigma genes - 発表者:朝井計
題目:The Sigma-I of Bacillus subtilis; regulation and function
6月10日-6月15日 ドイツ・ザンクトゴア(St Goar)で開催された独日二国間ワークショップ「原始シアノバクテリアから葉緑体への複雑進化ー基礎とその潜在的な応用」にて研究発表
- 発表者:西田生郎
題目:シアノバクテリアの光合成における膜脂質の脂肪酸位置分布の重要性
6月6日-6月11日 米国ウィスコンシン州Lake Lawn Resortで開催されたシアノバクテリア分子生物学ワークショップ (9th cyanobacterial molecular biology workshop) にて研究発表
- 発表者:仲本準
題目:Molecular chaperones and stress tolerance in cyanobacteria
6月5日-6月9日 米国カリフォルニア州Lake Tahoeで開催された、米国植物脂質研究会(National Plant Lipid Cooperative)主催の「Biochemistry and Molecular Biology of Plant Fatty Acids and Glycerolipids Symposium」にて研究発表
- 発表者:粟井光一郎
題目:Identification of the glycosyltransferase involved in biosynthesis of the glycolipid specific to filamentous cyanobacteria
5月6日-5月12日 台湾・台北の中央科学院で開かれた「植物維管束生物学会議2007」にて研究発表
- 発表者:西田生郎
題目:シロイヌナズナの糖輸送経路に形成される二次プラズモデ スマータの変異体