卒業生の声

Iさん (株式会社再春館製薬所 研究戦略開発部)

埼玉大学理学部分子生物学科から同じく分子生物学専攻の修士課程までを修了後、現在の会社に就職しました。職場では化粧品の開発を行っており、これまで新製品の中身自体を開発する仕事はもちろん、容器・包装やPR方法などに関わる製品企画の仕事もしました。弊社の研究開発ではそれが当たり前のことで、製品を生み出すところからお客様にお届けするところまで開発員が深く関わっていくため、製品に対しての愛着はかなりのものです。いわゆる「研究職」とは少し違った仕事で、研究に関する知識だけではなく非常に多くのことを求められています。

今3年目ですが、現在は新製品となる洗顔料の開発を主担当として進めています。現在の仕事と学生時代の研究内容とはほとんど関係ありませんが、研究室での経験は実験の進め方、結果から次を考えること、時間の使い方、資料作りや人へ伝えるためのテクニックなど、ものづくりや日々の業務の中でとても役に立っています。

学生時代には遺伝情報研究室に所属し、大腸菌膜リン脂質欠損株の生育とストレス応答に関しての研究をしていました。研究室では担当の先生方はもちろんのこと、同じ研究室の先輩さらには他の研究室の先生、先輩からも多くのことを教えていただきました。日々の実験に関してはもちろん同じ研究室の中で話すことが多いのですが、時に別の研究室の方と話すことで違った視点からの意見を聞くことができ、大きなヒントを得ることもあります。研究室では普段の実験に加え他の研究室と合同の勉強会を兼ねた合宿などもあり、興味を持てば持つほどいろいろなことを学ぶことができる環境にあると思います。

学生時代の経験は、もちろん専門的な知識を身に付けることにもなりますが、それと同時に知識を身に付ける術、技術を習得する術、それを発揮する術など多くの「技」を身に付ける期間だったのではないかと思っています。まったく分野の違う職に就いたとしても、費やした時間に無駄なことはありません。大学での6年間、中でも研究室に所属していた3年間は、今私が社会人として生活する中で振り返ってみて、非常に貴重な経験ができた有意義な時間だったと思っています。

Mさん (カリフォルニア大学デービス校博士研究員)

現在はカリフォルニア大学デービス校で博士研究員をしています。研究内容は細菌のセルロース分解酵素の発現制御と酵素の諸性質の解析、産業への応用(バイオマスエタノール生産など)です。取り扱う生物や生体物質は多岐に渡ります。分子生物学科では、遺伝子の発現制御から、酵素化学、糖や脂質まで広く学ぶ事ができ研究に非常に役立っています。

学生生活では、学科の人数が多くないせいか、よく図書館に集まってみんなで勉強をしたり、レポートを書いていたような記憶があります。サークルでは異なる学部や学科のひとたちと接する事で物事に対する視点が広がりました。研究室での思い出はとあるプロジェクトの締め切りに追われて、研究室のみんなで暫くの間昼夜を問わず実験したことです。なんとも不思議な連帯感が生まれました。研究室での実験も、学生実験が多いに役立ちました。

後輩のみなさんへ。分子生物学の基本は非常にシンプルです。1年生のうちは実験はありませんが、基礎を重点的に学ぶ事ができます。2年生からは学生実験が加わる事によってそれら基礎を実際に"体験"できます。4年生になり研究室に入る事により、実際の研究の一端に触れる事ができるだけでなく、人間関係も学ぶ事ができます。予習も大事ですが、是非復習に重点をおいて下さい。また、勉強も大事ですがまとまった時間がある大学生のうちに将来について考えてみることをおすすめします。

Kさん (キッセイ薬品工業)

私は、現在、製薬会社で新薬の開発業務に携わっています。新しい化合物(薬の候補)が発見され、薬となって販売されるまでに、人においての効き目(有効性)や副作用(安全性)が調べられます。人での有効性や安全性について調べることを新薬の場合においては「治験」といい、私はこの治験に関わる仕事をしています。治験の計画、病院への治験の依頼、治験がきちんと行われているかの確認、試験データの収集、治験結果のまとめなど様々な業務があります。

現在の業務では、薬や病気の知識はもちろん、それを科学的に見ることや、治験で得られたデータは何を示しているのかを考えることも必要になります。大学4年間で学んだ、分子生物学を始め、化学や生物学が基礎的な知識として活かされていると感じています。また、卒業研究を通じて学んだ、得られたデータをどのように解釈し、そこからどのようにして結論を導き出せばいいのかという考え方も役に立っていると感じています。授業のみならず、生活の中で学んだことや研究室で得られた経験など多くのことが今の私の財産になっています。
分子生物学科では、"学ぶ"大学生活が送れると思いますので、より多くのことを吸収し、成長する4年間にしてほしいと思います。

Oさん (タカナシ乳業)

私は2005年3月に理工学研究科分子生物学専攻を修了しました。大学院まで進学したので学生生活も長く、思い出もそれだけたくさんあります。学部生時代は勉強もそこそこに、サークル活動やアルバイトなどに精を出していました。そこで出会った人々を通して,あるいは経験して学んだことは私の大きな財産となっています。また、そこでできた友人はもっと大切なものとなっています。大学院に進学してからは、研究が面白く、それにどんどんのめり込んでいき,そこから生活が一変しました。未知なるモノに対して仮説を立て、実験して検証をし、その考察より再び新たな仮説を立てるという、文字にすると簡単なことなのですが、実際は非常に奥が深く、魅了されてしまいました。修士課程終了後は、学生時代にやっていたような研究を行える可能性が高いと思われる食品メーカーに就職しました。メーカーの中でも研究を行っている部門は一握りなので、まだ研究をする事ができず現場で働いている毎日ですが、これはこれで毎日新たな発見があり、何事もやってみなければ分からないものだなと実感している次第です。

高校生の皆さん伝えたい事は、サイエンスは面白いということです。やれば分かります。また学科の人間もアクが強すぎたり、あるいは全くなかったり、面白い人が多いです。入れば分かります。ぜひ勇気と希望を胸にいらしてください。 (写真は「抹茶アイスと私」)

Mさん (杏林製薬(株)創薬研究所)

私は製薬会社で新薬開発のための基礎研究を行っています。現在は薬の副作用とそのメカニズムを調べる業務を担当しており、DNAや酵素などの分子レベルの実験から、ラットやイヌなどを用いた動物実験まで様々な仕事に携わっています。

分子生物学科では遺伝子の転写・発現制御、タンパク質生化学、酵素反応、糖や脂質についてまで広く学ぶことができました。これらは大腸菌でもヒトでも多くの共通点が見られる、生物活動の基礎となっている話ばかりで、大学で大腸菌や植物を例に勉強したことが現在のイヌやヒトの組織を使った研究にも大いに役立っています。

また4年の卒業研究から始まる研究生活では、実験の進め方、データの解釈、結果の表現方法などを学びました。同時に、何度も実験が失敗してもへこたれない忍耐力や、ともに悩み考え、ともに笑ったり、熱く議論したりする中で築かれる先生や先輩との人間関係など、本当に多くのものを得ることができました。それらの経験は今の私の貴重な財産であり、大きな基盤となっています。

分子生物学科には知的探究心を刺激し、満たしてくれる環境が整っています。後輩の皆さん、大学受験受験を目指す高校生の皆さんも是非、自分が興味を持った事ととことん探究して行ってほしいと思います。そして、その過程で出会う人との関係を大切にし、人とのコミュニケーションを大切にしてほしいと思います。その経験は必ず自分を大きく成長させてくれるはずです。

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